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EXGEL DRY CARBON VEST 17 Lite 使用インプレッション
Paddock Gate プロデューサー藤松さんによる商品インプレッション
プロテクターを着てみると、その装着感の軽さに驚いた。手で持っていても軽さを感じていたのだが、実際にその重量は約0.5kgと比較的軽量。内蔵されるEXGELの重量を、ドライカーボン製の外殻が相殺しているようだ。さらに脇の下が一部えぐれた形状になっているため、肩回りが動かしやすい。個人的にあまりキツくプロテクターを締めるのが好きではないので、フロントの面ファスナーを軽めに止めていることもあるだろうが、圧迫感も少ない。ただし外殻のドライカーボンはよくしなるが変形に対する自由度が低いので、体の大きい方はキツさを覚えるかもしれない。ベルトの調整機能があるとはいえ、2019年1月時点でMサイズしかないので、サイズが合わない人には選択肢が皆無なのは難点だ。
筆者のシートは、パッドをつけていない状態+愛用のリブプロテクターでぴったりなサイズにしているのだが、EXGEL DRY CARBON 17 Liteはそれに比べるとサイド部分が少し厚手なためか、シートに座るとわずかに窮屈さを感じた。大きく息を吸うとプロテクターが主張してくる。もしシートパッドを使用しているのであれば、若干パッドを薄くして対処する必要があるだろうし、そうでなければシートをワンサイズアップしたほうが快適になるかもしれない。その一方で、背中面はベルトが一本通っているだけのシンプルな形状とされているため、シートにより深く座れる。背面パッドに関しては好みの部分にはなるだろうが、シートにしっかりと身を沈めたいというドライバーに向いているだろう。個人的にはこちらの方が好感触だ。
脇の下がえぐれた形状になっているが、試しに座った状態を横から見てみると、シートの折り返し部分やシートステーの取付ボルトといった、走行中に当たって痛みを感じる部分は完全に保護されていた。
装着感の無さがドライビングの集中力を高めてくれる
いざEXGEL DRY CARBON VEST 17 Liteを装着して走ってみると、少し不思議な感覚に襲われた。往々にしてリブプロテクターというものは、ハンドルを切る際に少しだけ腕に干渉して来たり、走っている最中にずり上がって脇に刺さったり、プロテクターの端が体に食い込んで来たりするものだ。もちろんそれは程度や慣れの問題も大きいので、これまでそんなことをいちいち気にしながら走ったことなどなかった。しかしこのリブプロテクターは、そもそもそのような現象が起きてこないのだ。あまりにも存在を感じないので、3~4周ほど走った時点で「もしかしてプロテクターをつけ忘れたのでは…」という不安に襲われたが、触ってみると確かにそこにプロテクターが存在した。
このような装着感の無さを覚えた理由はおそらく3点。一つ目は、脇の下がえぐれた形状によって、肩や腕の自由度が向上していること。二つ目は、カーボン外殻に包まれてはいるが、その縁を広い範囲で保護していること。最後に、ずり上がってこないよう構造が工夫されていることだ。内側にEXGELを配置することによって耐衝撃性能を高めているが、しかしそれによってカートからのインフォメーションがぼやけるようなこともほぼない。リブプロテクターの装着感の無さが、ドライビングへの集中力を高めてくれる、そんな経験は今回が初めてだった。レーシングカートドライバーにとって必要なものとは何なのか。このリブプロテクターは、それを真剣に考えて作られていることが伝わってきた。
一方でイマイチ把握しきれなかったのは、このプロテクターがどれだけの高い保護性能を持っているか、という点。今回のテストは鈴鹿サーキット国際南コースにて行ったため、そこを測るためにはよりバンピーなサーキットを選択する必要があった。ただ、試しに体をシートに預けるように乗ってみたり、縁石にがっつりとタイヤを引っかけてみたりもしたが、あばら骨に痛みを覚えるような現象は皆無だったことは記しておく。またテストしたのは12月中旬であったため、通気性に関しても測ることができなかった。
欠点が見当たらない…
このリブプロテクター、結局テストした3日間の内ほとんどのセッションで使用してしまったのだが、ここまでよくできていると粗探しの一つでもしたくなる。何かないかと、愛用品やさらに別のプロテクターも使っていくと、ようやく一つの欠点を発見した。それは、肩ひもが少し細いため長時間着用していると肩が少し痛くなってくる、ということ。背面で肩ひもが交差しているため、首付近に掛かっているというのも影響しているだろう。しかしこの痛み、ほかの製品に比べても誤差の範囲でしかない…。
価格は高いが確かな価値がある
何度でもいうが、このEXGEL DRY CARBON 17 Liteの価格は、リブプロテクターとしては高すぎる。もちろん高価である理由は十分に理解できる。他社の製品とは異なり、高価なドライカーボンを採用することで薄さと強度、そして軽量さを手に入れ、高い保護性能と車両からのインフォメーションを正確に伝えるという相反する要素を高次元で両立させているのだ。しかし誰しも予算は限られているのだから、2万円台のものを買って、残りは練習走行代に充てたほうがいい。ただ…、一度使ってしまえば納得できるだけの確かな性能と価値がここには存在する。筆者はこれまで、リブプロテクターなんて痛みを感じなければそれでいいと考えていたが、その認識が誤りであったことを実感させられ、ある種の敗北感すら抱いてしまっている。こんなものを一度使ってしまったら、ボロボロになった愛用品になんて戻れない。やはり悪魔の囁きに耳を貸すべきではなかったのだ。愛用品を新品に買い直し、一回でも多くレース出場できるように金を工面したほうがいいことは明確。そんなことは分かり切っているのだ。…いや…でも…しかし…。
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